「バッハとコラールを楽しむ3つのポイント」

東京バロック・スコラーズ音楽監督・指揮者三澤洋史に、第7回定期演奏会の聴きどころと鑑賞のポイントを直前インタビュー♪

名曲で揃えたプログラム

最近、クラシックの名曲をアレンジしたJPOPの曲がありますが、第7回定期演奏会では、そうした曲のもととなったバッハの宗教曲がラインナップされています。バッハ作品を良く知らない人でも聴けば「あ、あの曲か」とわかるのではないでしょうか?

三澤:今回の演奏会で聴かれる曲は、どれも、バッハのカンタータの中で最も有名かつ最高傑作ばかりのハイライトです。カンタータ140番「目覚めよ、と私たちに声が呼びかける」や、カンタータ147番の中の「主よ、人の望みの喜びよ」を聴くだけでも、お客様は、この演奏会に来てよかったと思うでしょう。そこにプラスして、シンプルなコラールを、バッハがどう料理して芸術作品にしていったかという、バッハの創作の秘密が次々と明かされていきます。

バッハとコラールとの関係を徹底追究

コラールは、ドイツ・プロテスタントの賛美歌をさし、バッハは、そうしたコラールを元にして作品をつくったといわれています。この関係がよくわからないのですが。

三澤:たとえば「主よ、人の望みの喜びよ」では、主な食材(古くから伝わるコラール原曲)は、実は人からの借り物であるけれど、バッハがそこに食材と絶妙にからみあうソース(ハーモニーや対旋律)をオリジナルで作ることによって、作品としてのコラールという料理全体を第一級のものに仕立て上げました。バッハの芸術家としての腕の確かさと、そこに表現されている彼のゆるぎない信仰心が、このような稀有の作品を生み出したわけです。

聴く前に曲の内容を知る効果は…

今回演奏されるモテット「イエスよ、私の喜び」も合唱ファンにはよく知られています。でも、初めて聴く人には、同じような旋律の小曲が何度も繰り返されるちょっと複雑な曲に感じられるでしょうね。

三澤:このモテットは、ベースとなるコラールの部分と「ローマ人への手紙」〔新約聖書〕の聖句をつかった部分の二重構造でできていて、その理解がある上で聴くと、楽しみ方は全く違ったものになります。TBSの演奏会では、曲のできかたについての解説をしながらプログラムを進めていきます。バッハの作品は、何も知らずに聴いてももちろん素晴らしいのですが、こうした事前のワンポイント・アドヴァイスによって、聴くときにその面白さが倍増し、より一層楽しんでいただけると思います。

なるほど、それでTBSの演奏会には必ず「テーマ」があり、カップリング講演会があり、演奏会の中にもトークがあるわけですね。

三澤:そうです。ですから単にバッハの作品を演奏するだけではない、こんな「一味違った演奏会」が定着していってくれればうれしいと思っています。